ラースと、その彼女(2007年)

3点。これはつまり精神病の話だよね。それをどうしたらウケるかってことでリアル・ドールを恋人だとおもい込むラースが生まれたんだとおもう。身も蓋もないけどそのあざとさが作品を薄っぺらくしてるような気がする。自分で買ったのにってところと、死んだ=結局人間だと認識してるのではというふたつの穴が気になる。
精神病は退行であって、子供だったら許される・大人はそういうことをしないようなことを大人が大真面目にやってしまう病気。原因が子供時代にある場合は心がそこに戻ってやり直そうとする。ラースも母親が出産で死んだことがトラウマになっていて、兄嫁が妊娠することで変調を始めてる。
あと精神病にはSOSを出して周囲に助けを求めている的な意味もある。こっちのパターンだと甘えにみられる場合がある。ラースの場合だと、ほんとはラースも人形だってわかっていてふざけてるだけだろうみたいな。この作品ではそういう展開にはならないのだけれど、みてる方はその可能性も気になってしまうから、そこで自分の病人に対する差別心みたいなものを思い知らされる。
ラースがいい人だったから(くまのエピソードとか)、町中の人々はラースにつきあってビアンカを人間として扱ってくれた。でもラースがそうでなかったとしたら?ラースがいつまでもビアンカを克服できなかったとしたら?また、ビアンカやラースを内心では気色悪いとおもっていても、そんなことを面と向かって言ったりはしない。大人の対応といえばそうだけど、現実はきびしい。そのへんをはぶいたことで、よくもわるくも無難で優等生な映画にまとまったとおもう。