歩いても 歩いても(2008年)

3点。何も起こらない淡々とした映画のわりには工夫されていてそれほど退屈しない。いろいろ考えさせられるという意味では悪くない作品だとはおもうのだけれども、説教されてるような感じで、何度もみたくなるような楽しい映画じゃあない。
全体の話は、両親が長男を失ったことをいつまでも引きずっていて、そのことが家族全体に影響し次男と父はあまり仲良くできない。母はもうちょっと早く声をかけていればなどと後悔しつつ、助けられただけの他人をあえて毎年家に呼び、気まずい気分にさせて気を晴らすという黒い一面をみせる。これを伏線にして、いつもちょっとだけ間に合わないというテーマが出てくる。簡単に言えば親孝行する前に親は死んじゃうぞと。
父親の問題点は、無愛想。おばあちゃんの家と言われただけで怒る。医者以外の仕事を馬鹿にする。コンビニの袋を持つ姿をみられたくない等他人の目を気にする。ひとのおわんに自分のなめた箸を平気で突っ込む。母親の問題点は、腹黒さ。本人がいなくなるとすぐに本音を口にする。いいおばあちゃんにみせかけて、子供(孫)たちはうるさい、娘のダンナとは他人だから暮らしたくないと実はおもっている。次男の嫁が子持ちの未亡人だったことを普通じゃないとして差別する。本人に子供は作らない方がいいなどとまで言ってしまう。
こういう親たちにおとなしく従って仲良くするのはなかなかむずかしい。これでは親孝行などされなくて当然だし、子供を失うのも因果のようにさえおもえる。けれど、その一方で彼らの心境もわからないでもない。世代によって考え方が違うのも自然なことだ。つまり、そういう欠陥を抱えた人間だからこそ、助け合ったりできるのは家族ぐらいなもんじゃないかということだろう。気に入らなくても家族というのはどこまで行っても家族だよと。